<1976年-By Request>The Pretender / Jackson Browne

2009. . 28
The Pretender / Jackson Browne
(プリテンダー/ジャクソン・ブラウン)

I'm going to rent myself a house
In the shade of the freeway
Gonna pack my lunch in the morning
And go to work each day
And when the evening rolls around
I'll go on home and lay my body down
And when the morning light comes streaming in
I'll get up and do it again
Amen.
Say it again
Amen.

これから僕は、まず家を借りるんだ
フリーウェイの影に建つ家をね
そして朝になれば弁当をつめて
仕事へと行くのさ、毎日毎日ね
日が暮れたら
家へと帰り、身体を横たえるんだ
朝日が窓からさしこんでくれば
僕は起き上がり、同じことをまた繰り返すんだ
アーメン
もう一度お祈りしよう
アーメン

I want to know what became of the changes
We waited for love to bring
Were they only the fitful dreams
Of some greater awakening?
I've been aware of the time going by
They say in the end it's the wink of an eye
When the morning light comes streaming in
You'll get up and do it again
Amen.

僕は知りたいんだ、変わった僕たちがどうなったのかを
僕らが待っていた、愛がもたらす変化がどうなったのかをね
それはつまり、ただの気まぐれな夢だったのかな?
何かより素晴らしいものを呼び覚ますように思えただけの
僕は、過ぎ行く時の流れを思い知ってきた
そして結局は、ただまばたきするほどの短い時間なんだということも
朝日が窓からさしこんでくれば
君だって起き上がり、同じことをまた繰り返すんだ
アーメン

Caught between the longing for love
And the struggle for the legal tender
Where the sirens sing and the church bells ring
And the junk man pounds his fender.
Where the veterans dream of the fight
Fast asleep at the traffic light
And the children solemnly wait
For the ice cream vendor
Out into the cool of the evening
Strolls the Pretender
He knows that all his hopes and dreams
Begin and end there

愛を焦がれる思いに捕らわれ
生きる為に必死で金を稼いで
サイレンが鳴り、教会の鐘の音が響く
そして廃品回収屋が車のフェンダーを叩く音もする
退役軍人がかつて戦った日々を夢に見ている
信号待ちの間に寝ているヤツもいる
子供たちは生真面目な顔で
アイスクリーム屋がやってくるのを待っている
夜の冷えた空気が漂うそんな街へと繰り出して
わかったふりをしながらぶらついてみようか
全ての望みや夢が
この街で始まり終わりを迎えるんだと、知ったかぶりをしながらね

Ah the laughter of the lovers
As they run through the night
Leaving nothing for the others
But to choose off and fight
And tear at the world with all their might
While the ships bearing their dreams
Sail out of sight

ああ、恋人たちの笑い声
連中は笑いながら夜を駆け抜けていく
他の者には何も残さずに
2人きりになれる場所を探しては、ただがむしゃらに
力の限りを尽くして手に触れるものをむしりとっていく
そんな2人の夢を積み込んだ船は
そうしているうちにどんどん視界から消えていくんだ

I'm gonna find myself a girl
Who can show me what laughter means
And we'll fill in the missing colors
In each other's paint-by-number dreams
And then we'll put our dark glasses on
And we'll make love until our strength is gone
And when the morning light comes streaming in
We'll get up and do it again
Get it up again (Notice)

これから僕も、恋人を見つけようと思うよ
笑うことの意味を僕に教えてくれる彼女を
そして僕らは、2人に足りない色を塗り込むんだ
お互いの夢へ、数字に色を塗るようにね
その後、僕らは真っ黒なサングラスをかけるんだ
そして愛し合うのさ、2人の力が果てるまで
朝日が窓からさしこんでくれば
僕らは起き上がり、同じことをまた繰り返すんだ
寝た子をまた起こすのさ

I'm gonna be a happy idiot
And struggle for the legal tender
Where the ads take aim and lay their claim
To the heart and the soul of the spender
And believe in whatever may lie
In those things that money can buy
where true love could have been a contender
Are you there?
Say a prayer for the Pretender.
Who started out so young and strong
Only to surrender.

これから、僕は幸せなバカ野郎になるんだ
そして生きる為に必死で金を稼ぐんだ
広告が客へ狙いを定め、耳障りのいい言葉を並べてる
金を支払ってくれる者の心へ、魂へと訴えかけようとしているこの街で
そしてそこにあるものなら何でも信じるんだ
金で買えるものなら何でも信じるんだ
本当の愛こそが信じられるものだったはずのこの街で
僕の話を聞いてるかい?
わかったふりをしているそんな男の為に、祈ってくれよ
始めは若くて強かったのに
今じゃただの負け犬になった男の為に

Say a prayer for the pretender
Are you there for the pretender?
Say a prayer for the pretender
Are you there for the pretender?
Are you prepared for the pretender?

わかったふりをしているそんな男の為に、祈ってくれよ
わかったふりをしているそんな男の為に、そこにいてくれるのかい?
わかったふりをしているそんな男の為に、祈ってくれよ
わかったふりをしているそんな男の為に、そこにいてくれるのかい?
わかったふりをしているそんな男の為に、祈ってくれよ
わかったふりをしているそんな男の為に、覚悟はできているのかい?

(Notice:ここで言う”Get it up again”は、あー・・・、もう一度「起きる」のではなくて、もう一度「する」ってことです、はい。

<対訳>多々野親父

●このブログを初めてしばらくの間、mixiのメッセージを通じて対訳希望のリクエストを募っていたことがあります。それはすぐに破綻してしまうのですが(もちろん主な原因は私の遅筆と時間のなさでした、スイマセン)、その中で驚いたのはとにかく「ジャクソン・ブラウンの曲を」という声が多かったことでした。洋楽系のHPを覗いてみても、彼のアルバムを自らの思い出と重ね合わせながら熱く語っている方が何人もいて、その根強い人気の理由っていったい何なのだろう?と考えさせられもしたんですね。

私にとってのジャクソン・ブラウンは「とにかく訳がやりにくい人」ということになります。婉曲的な表現が多く、それが曲の肝にあたるところで炸裂する為に、1行訳しては考え、また1行訳しては・・・、の繰り返しになることが常で、それが彼に対する意識を薄れさせる原因になっているように思っています。私の場合、対訳をする時はその曲を聴きながらリズムや雰囲気に合わせて指を動かしていくのがベストだと考えているゆえ(ライブ感覚みたいなもの?)、軽快な8ビートに身を揺らしながら訳の方は一向に進んでいかないという状況になると、もちろん自分の英語力が稚拙過ぎるという重大な背景があるにしても、やはりストレスだと感じてしまうんですね。

なんだか言い訳めいたテキストになってきましたね・・・(苦笑)。

しかし、わかってしまえば彼の歌詞世界は実に単純であることもまた事実だったりします。
多くの人が彼の代表作として認識している「孤独なランナー」も、悲しいことにほとんどのケースでタイトルの”Running On Empty”を「虚空に向かって走っている」とか、「何もない場所へと走っている」と訳されていて、その誤訳がジャクソン・ブラウンに抽象的なイメージ(更に言えば世捨て人みたいな感じ?)を植えつけてしまったように思うんですね。実際は「ガス欠状態でもアクセルを踏み続けている、わき目もふらず走り続けている、好きな女性へと追いつく為に」ということで、それまで歩んできた自分の姿をトレースしつつ非常に前向きな世界が語られているわけです。例えがいいのかはわかりませんが、ブルース・スプリングスティーンの歌う世界よりも遥かに強く、無鉄砲な男がそこにいる、なんて言い方もできるんじゃないかと思ったりもします。

その一方で、強い陰影と後ろ向きな姿を簡単には理解できない歌詞で歌う曲も存在します。その代表格が今回取り上げた「プリテンダー」ということになるのでしょう。この作品は、彼にとって4枚目のアルバムである「プリテンダー」のタイトル曲であり、その最後を飾る作品ともなっています。
このアルバムがリリースされたのは1976年のことでしたが、その製作段階で信じられない悲劇がジャクソンを襲いました。遡ること4年、ジャクソンはフィリスという女性と同棲をはじめ、イーサンという名の子供を授かることになります。1975年に2人は結婚し、真の大人へとなるべくその階段を上り始めていたわけですが、アルバム「プリテンダー」を製作していた最中の1976年4月にフィリスが自殺してしまうんですね。
ジャクソンは、それでも仕掛かっていた仕事をやり遂げてアルバムをリリースします。妻の死については「ヒア・カム・ドーズ・ティアーズ・アゲイン(あの時流した涙がまたやってきた、という意味ですね)」という曲でその気持ちを形にしていますが、最愛の人が去り、残された自分がその理由を自問自答する内容ではあるものの、そこに死を思わせるフレーズは登場しません。直接それを言葉にできるほどの強さを今の自分は持たない、それほどジャクソンを覆った悲しみは大きなものだったということだったのだと思われます。
しかし、この悲劇が呼び水となってこのアルバムは好調な売れ行きを見せ、ビルボードのアルバムチャートで最高位5位をマークすることになります。これは彼にとって初めてのTop10入りであり、最終的には300万枚を超えるビッグセールスを記録するに至ります。こうした現実を当時の彼がどう感じていたかには興味のあるところですが、2008年にローリングストーン誌のインタビューに答えた際には、このアルバムについて「プリテンダーには長い時間がかかったよ。毎日取り組んでいたってことではないんだけどね。僕はあのアルバムの曲が全て出揃うまで、気が重かったんだ。曲を書く作業ってのは模索することだ。僕の曲のほとんどは問いかけの束で形作られてる、そしてそれらに答えるにはしばらく時間がかかるんだ」と話しています。このコメントには当時と変わらぬ苦さがにじみ出ていると言えるでしょう。
そうした背景を思いながら今回対訳した「プリテンダー」を聞くと、どうしてもそこにフィリスの存在を感じずにはいられません。生きる為に自分の思いを押しつぶしてでも金を稼ぐことを受け入れ、新しい生活を始める場所と相手を探してありきたりな日々を送ることをよしとする、そんな「人生をわかったふりしている男」の姿は、死による別れなどなかったらそんなことにはならなかったのに、という仮定法的暗喩が込められていると思えてならないんですね。そしてこの曲に自分の姿を投影し共感する、もしくはあまりに自分に似すぎていると拒絶するリスナーが多いのも、ジャクソン・ブラウンがその根幹に極めて一般人的な感覚を携えているからだと言えるように思えます。
プリテンダーとは誰のこと?という質問にジャクソンは「・・・僕じゃないことは確かだね。まぁ、時々皆は歌詞に出てくる人物がまるで僕そのものだ、なんて言うけど・・・、実際のところ僕にだって少しはプリテンダー的な部分はあるけどね。でもこの言葉は夢を見失った人たちのことなんだ、それは自分以外の人たちが成功するのを見て自分の生き方も確かなものにしようと行動を起こした人たちのことでもある。だから、多分ある特定のジェネレーションの多くがここに当てはまるのかもしれない。夢とは物による豊かさによりもたらされるというライフスタイルを受け入れたものの、そのなかのいくつかはもう崩壊してしまっている、というような人たちがね」と説明しています。置き去りにされた心を抱えながら、表向きは夢の生活を享受している「ふり」をしている人たちと解釈すれば、それはジャクソンが含まれる団塊の世代だけでなく、我々やその下のジェネレーションにも大いに当てはまるものがあるように思われます。

「プリテンダー」はこのアルバムから2枚目のシングルとしてカットされましたが、ビルボードのナショナルチャートでは58位までしか上昇できませんでした。アルバムの方が売れたことを思うと、この結果は意外だったとも言えるのですが、やはりジャクソンの場合はある一部を切り取っても意味がないという見方をここではしたいところです。