<1970年>We've Only Just Begun / Carpenters
(愛のプレリュード/カーペンターズ)
We've only just begun to live
White lace and promises
A kiss for luck and we're on our way
(We've only begun)
私たち、暮らし始めたばかり
白いレースに誓いの言葉
幸運の口づけをかわして、2人歩いていく
(私たちはたった今始めたばかり)
Before the risin' sun, we fly
So many roads to choose
We'll start out walkin' and learn to run
And yes, we've just begun
陽が上る前に、2人は旅立っていく
数え切れないほどの道が、選ばれるのを待っている
私たちは歩くことから始め、やがて走ることを知るでしょう
そう、私たちはたった今始めたばかりだから
Sharing horizons that are new to us
Watching the signs along the way
Talkin' it over, just the two of us
Workin' together day to day
Together
Together
私たちの為に真新しい姿で横たわる地平線を共に目指し
道しるべを見落とぬよう足を進めていく
語り尽くすの、2人で
共に働くの、来る日も来る日も
一緒に
2人で
And when the evening comes, we smile
So much of life ahead
We'll find a place where there's room to grow
And yes, we've just begun
夕闇を迎えれば、2人は微笑みあうの
向かう先に待つ有り余る人生に思いを馳せて
これから2人は、年を重ねる場所を見つけるでしょう
そう、私たちはたった今始めたばかりだから
Sharing horizons that are new to us
Watching the signs along the way
Talkin' it over, just the two of us
Workin' together day to day
Together
Together
私たちの為に真新しい姿で横たわる地平線を共に目指し
道しるべを見落とぬよう足を進めていく
語り尽くすの、2人で
共に働くの、来る日も来る日も
一緒に
2人で
And when the evening comes, we smile
So much of life ahead
We'll find a place where there's room to grow
And yes, we've just begun
夕闇を迎えれば、2人は微笑みあうの
向かう先に待つ有り余る人生に思いを馳せて
これから2人は、年を重ねる場所を見つけるでしょう
そう、私たちはたった今始めたばかりだから
<対訳>多々野親父
●カーペンターズが好きだ、よく聞いている、と口にするのが何となく気恥ずかしいのは、やはりカレンとリチャードの2人が放っていた「良家の子供」的な雰囲気と、それに続く無垢で清廉潔白なイメージに、自分たちが置かれている現実との違いを感じてしまうからなのかもしれません。確かに、1946年生まれのリチャードは2012年4月の時点で65歳を迎えようとしていますが、それでもインタビューでカーペンターズ時代のことを尋ねられれば「自分が本当にやりたかったことはカレンのようなリードボーカルだったんだ」と冗談めかして話しもします。ですが、それはやっぱりマジメな人が良識の範囲で笑いをとろうとしているという、どこか堅苦しい感じを抱いてしまうものなんですね。リチャードは決して銀行マンや役人的な空気を放つ人ではないことをわかっていても、その姿と自分を重ね合わせると、どこか座り心地の悪さを感じてしまうわけです。それは、彼らのシングルがビルボードのチャートを駆け上がっている最中にラジオでそれを聞いていた時も、いい年になった今も変わらずにおいらの中で存在続けている感覚だったりします。何というか、彼の家へ招かれても話が途切れてしまい、仕方なく出されたお茶をおいしいと振ると、そうか?と言いながら何杯も、しかも断れないまま他の種類のお茶まで出されてお腹がガボガボになってしまう、というようなね(笑)。
しかし、カーペンターズがこれまでに残してきた曲の数々は、どれも素晴らしいものだったことは間違いありません。カレンが拒食症によりこの世を去って、2人の活動は本人の意思に関係なく終止符を打たざるを得なくなってしまったわけですが、しかし生きている我々には二人がレコードに刻んだ音が残されています。来年(2013年)はカレンの30回目の命日にあたることもあり、これからジワジワとカーペンターズの軌跡を振り返る番組や書籍が登場することになるだろうという予想も含め、今回はその中でも特にリチャードらしい経緯で形作られ、ビルボードHot100で最高位2位をマークした1970年のヒット曲「愛のプレリュード」を取り上げてみようと思います。
ポール・ウィリアムスが作詞し、ロジャー・ニコルスが作曲したこの曲は、元々銀行のテレビCMとして作られ、流されていたものでした。このCMは新婚夫婦を顧客として掘り起こそうというテーマで製作されたものでした。そして、2人にこの中で使用する曲を作って欲しいという依頼があったのは1968年のことでした。教会で式を挙げるいくつかのカップルの姿を写したスナップ写真を使いながら、男性コーラスが「We've only just begun」と歌うこのCMバージョンをテレビで聞いて、リチャードは「ん?これはいいんじゃない?」と思い、編曲を始めることになるわけですね。
・・・というのが、よく知られているこの曲の流れなのですが、実際にはそう簡単ではない展開があったとポールは後に振り返っています。「あの銀行のCMに携わるにあたっては、とっかかりからして全てロマンチックだったと言えるんだな。トニー・アッシャーというそれはそれは素晴らしい作曲家がいてね、彼はあのCMにも曲を書いたんだよ。だけどスキーで腕を折ってしまい、作曲に必要なピアノを弾くのはおろか何もかもができなくなってしまったんだ。だからトニーはやるはずだったあの仕事をロジャーと僕に代役でやってくれないか?と言ってきたんだよ。それで代理店からCMの内容について連絡があったんだ。で、我々は若いカップルが結婚式を挙げ、陽が落ちていく中を車でハネムーンに旅立っていく様子を映しながら”これから長い道のりを走っていかなければなりません。そのお手伝いは、クロッカー銀行へ”というナレーションが入ることになる、と説明されたんだな。僕は足を彼らの所へ足を運んで”クロッカーにはどんな音韻を踏むんだい?クロッカー、で何?”って言ったんだ。そしたら彼らは”いや、ジングルを作って欲しいわけじゃないんですよ”と言葉を選びながら答えたんだ。彼らが僕らに依頼したのは、今で言うならミュージックビデオのようなものだったんだろうな。若いカップルが結婚していく様を映して、陽が落ちていく中をハネムーンに旅立っていく、式は終わり、夫婦になって最初のキスやら何やらも全部済んだね、というね。だから僕とロジャーは、それに合っただろう曲に作り直したんだ」と語っています。つまり、アッシャーが怪我をしていなければこの曲も生まれなかったし、リチャードの耳に入ることもなかったというわけだったんですね。
更にポールは「この曲の2番までの歌詞を書いたんだよ。コマーシャルが2つめのバージョンを製作するにあたってそれ用の歌詞も書いたんだけど、結果絵的にこの部分がサビになったんだな。僕らは3番の歌詞を書き加えたんだけど、それが聞いた人には自分でレコーディングしたいと思わせるものになったんだろうね。だから作った後で、自分がそうしたようにバラバラにされるんだろうと思ってたんだ。そしたらリチャードが連絡してきた。彼は言ったんだ、あの曲が完璧になるって言ったらどうする?ってね。だから僕らは言ったのさ、そんなこと聞いてくるなんておかしいよ、とね。そして、もし不完全な曲なんだとしたら、僕らは嘘ぶいてこう言うだけだったよ”うーん、もちろんOKだ”とね。そして仕事場の椅子に座りなおし、曲を書き直していたはずなんだ。あの当時の作曲作業って言うのはこういう感じだったんだよ。この曲の作曲を仕上げたのは出版社が出した車の後部座席だったことを覚えてる。プロデューサーのところへ向かう途中だったな。「愛のプレリュード」について、僕は曲作りに携わった者として、出版社も出版した者として、それぞれ権利を保持することになったよ(=カーペンターズが歌い、売ってくれたものではあるけれど、という意味ですね)」。
一方、リチャードはポールの推測通り完璧な形を目指して彼なりの感性で「愛のプレリュード」を料理したことを後のインタビューで明かしています。彼が最も強調したかったのは、ポップスとしての求心力、すなわちリスナーの心を捉えて離さないドラマチックな展開でした。具体的には"Together,togeter"と歌う部分を転調するといものだったんですね。この彼なりのアレンジの結果、今この曲をカラオケで歌おうとするとメロディを見失うという弊害を生んでいることにもなるのですが、それがゆえにカレンの歌唱力を改めて実感できる曲にもなっている、ということが言えるでしょう。


